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眉間に皺を寄せながら男が辺りを見回す。
酷い有様だ。
この森はどんなに苦しんだのだろう?
「よくもまあ、私達の先回りをして荒らしていくわよね〜。」
ちょっぴり男に寄り添う様に近づきながら言った女。
森などろくに見ず、男をじっと見つめる。
「ユーチャ様は森を愛する優しいお方だから、とっても悲しいのね…いやん、素敵v」
クネクネとしなりを作りながら言う女に向き合うこともせず、ユーチャは答える。
「……いや違うよ、マニョ。森が無くなると私の今後の生活が危うい……。」
そう言ったユーチャの顔を、ピコピコと奇妙なウサ耳を揺らしながら覗き込むのは噂の道化師ペン・ギン。
ユーチャがペン・ギンのウサ耳に何気なく触れながら言葉を続けた。
「いつまでも『勇者』ではいられないだろう?魔王を倒したら『村人』に戻って、また木こり生活を送ろうかと思っているんだが……森が無くなっては収入源がないじゃないか。」
冷静な様子で言った発言は微妙に『勇者様』とはズレている。
暫く沈黙が続く。
「………いやーんv 将来設計バッチリなユーチャ様も素敵v」
明らかにツッコミ役が不足しているパーティだった……。
ふと、ペン・ギンの片耳が持ち上がる。
「おー、カラシュ来たクマ!」
空を見上げたペン・ギンにつられ、ユーチャとマニョも遠くに視線を送る。
確かに、あの黒い翼の鳥人はカラシュに違いない。
「……しまった。今日は適当なキラキラ物を用意していない。」
「あら、コインでも投げとけば?」
「勿体ないじゃないか、カラシュなんかにコイン投げたら。」
「そうね、流石ユーチャ様!カラシュ撃退ごときにコインなんて…その辺にガラス片でも落ちてないかしら?」
ユーチャとマニョがブツブツと作戦とも言えない会話をする。
そうこうしているうちに、カラシュはかなり近い距離まで来た。
羽を器用に羽ばたかせ、空中で止まった。
切羽詰まった様な、落ち着きのない声を響かせる。
「ペン・ギン!」
「お?何クマ?」
「ユーチャ様、光り物見当たらないわ。」
「……キラキラ光る魔法とかないの?」
「うーん………っていうか、たまには魔法で迎え撃てばいいのよね!」
閃いたとばかりにマニョが元気に言った後、そのまま呪文の詠唱に入る。
彼女の手に魔力の球体が現れた。
「そーれっ♪」
かけ声と共に投げつけた魔球は、速度を増すと共に巨大化していく。
空中で身を翻したカラシュは寸でのところでそれを避けた。
「………待て!待ってくれ!!」
「あーらダメよ!珍しく私の魔法、絶好調につき、止めてあーげない♪」
慌てた様子でカラシュが静止するも、マニョは次の魔球をかまえる。
「うふふ〜んv ユーチャ様!マニョの華麗な魔法を見ててね〜v」
投げキッスのあと、大きく振りかぶった。
「そ〜〜〜〜〜〜〜れ………………!?」
投げようとした瞬間、マニョは後頭部に衝撃を受ける。
「ちょっと黙れのクマチョップなのクマ!」
マニョの手の中の魔球はあっという間に霧散した。
「………な〜〜〜にをしてくれんのよ!馬鹿ペン!!」
「黙れ、色ボケ魔女なのクマ!」
「なんですって〜〜〜!?」
ペン・ギンは怒るマニョを無視して空を見上げる。
カラシュと目があった。
「なんですか〜?なのクマよ。」
ペン・ギンがニッコリと微笑む。
カラシュは躊躇っている様に沈黙する。
「クマのこと呼んだクマ。だから何クマ?って訊ねたクマ。続きをするクマ♪」
ペン・ギンの後ろにユーチャが来て、同じ様に見上げてきた。
二人に殺気がないことを確認して、カラシュは意を決した様に舞い降りてきた。
恐る恐る、両手で大切に抱えてきたものを二人に見える様に差し出した。
柔らかそうな白い羽毛の鳩がグッタリと目を瞑っていた。
「………助けてくれないか?」
ペン・ギンが鳩をじっと見る。
「白鳩の鳥人なんだ……でも、負の気にあてられて苦しんでいる。」
ペン・ギンが視線を上げカラシュを見た。
カラシュが少し身を小さくするかの様に肩を落として呟く。
「魔王が言った……あんたは強い正の気を持っていると……頼む、助けてくれないか?」
「何言ってんのよ!散々迷惑かけてきといて、虫が良過ぎない?」
マニョの言葉にカラシュが悲しそうな顔をする。
いつも尊大な黒鴉の鳥人が、今日はやけにしおらしい。
「分かってる、こんなこと頼めた義理じゃない……。だけどポッポは…この白鳩は何も罪はないんだ……だから。」
じっと聞いていたユーチャが、ペン・ギンに視線を送る。
「ペン・ギン。治せるのか?」
「‥‥‥。」
カラシュの祈る様な視線が注がれる。
「……知らんクマ!クマはそんな方法知らないクマよ?」
カラシュを睨んでいたマニョがギョッとする。
一瞬泣き出すかと思うほど、悲しみが浮かび上がっていた。
思わず「そんなに悲しまないでよ」と言ってしまいそうな表情だ。
ユーチャが気の毒そうに、優しい声音で声をかける。
「…あまり気を落とすな……何か方法を探そう。」
カラシュはプルプルと首を振る。
重い空気が漂う………が。
「クマチョーップ!!なのクマ!」
緊張感のない声と共に、弱々しい白鳩の体にペン・ギンのチョップが降り注いだ。
ぎゃーーーーーーーーー!!!
と悲鳴を発しそうなほど3名が驚き、そしてペン・ギンに「蹴り」「鉄拳」「平手」が飛ぶ。
「トドメを刺すな、馬鹿クマーーーーー!!」
珍しいユーチャの怒鳴り声と共に、ペン・ギンが泣きべそをかく。
「ひ、酷いクマーー。軽い冗談だったのクマ〜。クマ悪くないクマ〜〜。」
「‥‥‥‥‥まって‥‥‥確かに悪くない!!」
突如カラシュが慌てた声を出す。
そして……とうとう涙を流して言った。
「ポッポが………目を開けた!!」
カラシュの腕の中で、白鳩が不思議そうに赤い瞳で辺りを見回していた。
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酷い有様だ。
この森はどんなに苦しんだのだろう?
「よくもまあ、私達の先回りをして荒らしていくわよね〜。」
ちょっぴり男に寄り添う様に近づきながら言った女。
森などろくに見ず、男をじっと見つめる。
「ユーチャ様は森を愛する優しいお方だから、とっても悲しいのね…いやん、素敵v」
クネクネとしなりを作りながら言う女に向き合うこともせず、ユーチャは答える。
「……いや違うよ、マニョ。森が無くなると私の今後の生活が危うい……。」
そう言ったユーチャの顔を、ピコピコと奇妙なウサ耳を揺らしながら覗き込むのは噂の道化師ペン・ギン。
ユーチャがペン・ギンのウサ耳に何気なく触れながら言葉を続けた。
「いつまでも『勇者』ではいられないだろう?魔王を倒したら『村人』に戻って、また木こり生活を送ろうかと思っているんだが……森が無くなっては収入源がないじゃないか。」
冷静な様子で言った発言は微妙に『勇者様』とはズレている。
暫く沈黙が続く。
「………いやーんv 将来設計バッチリなユーチャ様も素敵v」
明らかにツッコミ役が不足しているパーティだった……。
ふと、ペン・ギンの片耳が持ち上がる。
「おー、カラシュ来たクマ!」
空を見上げたペン・ギンにつられ、ユーチャとマニョも遠くに視線を送る。
確かに、あの黒い翼の鳥人はカラシュに違いない。
「……しまった。今日は適当なキラキラ物を用意していない。」
「あら、コインでも投げとけば?」
「勿体ないじゃないか、カラシュなんかにコイン投げたら。」
「そうね、流石ユーチャ様!カラシュ撃退ごときにコインなんて…その辺にガラス片でも落ちてないかしら?」
ユーチャとマニョがブツブツと作戦とも言えない会話をする。
そうこうしているうちに、カラシュはかなり近い距離まで来た。
羽を器用に羽ばたかせ、空中で止まった。
切羽詰まった様な、落ち着きのない声を響かせる。
「ペン・ギン!」
「お?何クマ?」
「ユーチャ様、光り物見当たらないわ。」
「……キラキラ光る魔法とかないの?」
「うーん………っていうか、たまには魔法で迎え撃てばいいのよね!」
閃いたとばかりにマニョが元気に言った後、そのまま呪文の詠唱に入る。
彼女の手に魔力の球体が現れた。
「そーれっ♪」
かけ声と共に投げつけた魔球は、速度を増すと共に巨大化していく。
空中で身を翻したカラシュは寸でのところでそれを避けた。
「………待て!待ってくれ!!」
「あーらダメよ!珍しく私の魔法、絶好調につき、止めてあーげない♪」
慌てた様子でカラシュが静止するも、マニョは次の魔球をかまえる。
「うふふ〜んv ユーチャ様!マニョの華麗な魔法を見ててね〜v」
投げキッスのあと、大きく振りかぶった。
「そ〜〜〜〜〜〜〜れ………………!?」
投げようとした瞬間、マニョは後頭部に衝撃を受ける。
「ちょっと黙れのクマチョップなのクマ!」
マニョの手の中の魔球はあっという間に霧散した。
「………な〜〜〜にをしてくれんのよ!馬鹿ペン!!」
「黙れ、色ボケ魔女なのクマ!」
「なんですって〜〜〜!?」
ペン・ギンは怒るマニョを無視して空を見上げる。
カラシュと目があった。
「なんですか〜?なのクマよ。」
ペン・ギンがニッコリと微笑む。
カラシュは躊躇っている様に沈黙する。
「クマのこと呼んだクマ。だから何クマ?って訊ねたクマ。続きをするクマ♪」
ペン・ギンの後ろにユーチャが来て、同じ様に見上げてきた。
二人に殺気がないことを確認して、カラシュは意を決した様に舞い降りてきた。
恐る恐る、両手で大切に抱えてきたものを二人に見える様に差し出した。
柔らかそうな白い羽毛の鳩がグッタリと目を瞑っていた。
「………助けてくれないか?」
ペン・ギンが鳩をじっと見る。
「白鳩の鳥人なんだ……でも、負の気にあてられて苦しんでいる。」
ペン・ギンが視線を上げカラシュを見た。
カラシュが少し身を小さくするかの様に肩を落として呟く。
「魔王が言った……あんたは強い正の気を持っていると……頼む、助けてくれないか?」
「何言ってんのよ!散々迷惑かけてきといて、虫が良過ぎない?」
マニョの言葉にカラシュが悲しそうな顔をする。
いつも尊大な黒鴉の鳥人が、今日はやけにしおらしい。
「分かってる、こんなこと頼めた義理じゃない……。だけどポッポは…この白鳩は何も罪はないんだ……だから。」
じっと聞いていたユーチャが、ペン・ギンに視線を送る。
「ペン・ギン。治せるのか?」
「‥‥‥。」
カラシュの祈る様な視線が注がれる。
「……知らんクマ!クマはそんな方法知らないクマよ?」
カラシュを睨んでいたマニョがギョッとする。
一瞬泣き出すかと思うほど、悲しみが浮かび上がっていた。
思わず「そんなに悲しまないでよ」と言ってしまいそうな表情だ。
ユーチャが気の毒そうに、優しい声音で声をかける。
「…あまり気を落とすな……何か方法を探そう。」
カラシュはプルプルと首を振る。
重い空気が漂う………が。
「クマチョーップ!!なのクマ!」
緊張感のない声と共に、弱々しい白鳩の体にペン・ギンのチョップが降り注いだ。
ぎゃーーーーーーーーー!!!
と悲鳴を発しそうなほど3名が驚き、そしてペン・ギンに「蹴り」「鉄拳」「平手」が飛ぶ。
「トドメを刺すな、馬鹿クマーーーーー!!」
珍しいユーチャの怒鳴り声と共に、ペン・ギンが泣きべそをかく。
「ひ、酷いクマーー。軽い冗談だったのクマ〜。クマ悪くないクマ〜〜。」
「‥‥‥‥‥まって‥‥‥確かに悪くない!!」
突如カラシュが慌てた声を出す。
そして……とうとう涙を流して言った。
「ポッポが………目を開けた!!」
カラシュの腕の中で、白鳩が不思議そうに赤い瞳で辺りを見回していた。
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