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心の赴くままに言葉を綴る、おかしな創作の空間
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以前は当たり前の様に舞い戻っていた城…
今、その城を目前に見遣り、軽く左胸を押さえる。
やっと辿り着いた。
敵から味方へ…味方から敵へ…
ただ立つ位置が変わっただけで、この城は気が遠くなるほど届かない存在になった。

「ヤバいのか?」

落ち着いた声にカラシュは振り返る。
宿敵を目前にしながらも勇者の様子は変わらない。
トントンと自身の左胸を軽く叩き、質問の内容を暗に示す。

「…いや、まだ大丈夫だ…。」

あと少しなら………耐えられる。
折角ここまで来たのだから……もう少し耐えてみせる。

「それより城への経路だ……この城へは大きく3つの経路がある。」

カラシュは気を引き締め、話題を切り替えた。
ユーチャは静かに聞く姿勢を見せた。

「一つ、空よりの入り口。これは飛行系の奴らが利用する為の場所だ。城の中央にある。魔王のいる間に近いには近いが……案外魔物は飛行出来る者が多い。隠れる場所も無し。一番目立つ入り口だと思っていい。」

ユーチャの目が納得したと告げる様にカラシュを見る。
それを受けてカラシュは続きを話し始める。

「二つ、地上の入り口。これは飛行出来ない奴らが利用する。でかい入り口だが、意外と監視は杜撰だ。でも潜入してからが問題ある。魔王のいる間へ遠い、魔物に遭遇する確率は高いだろう。」

いつの間にやらマニョがユーチャの隣に来ていた。
カラシュの話を聞き始める。

「三つ、地下の入り口。」

そう言うと、マニョが不思議そうな顔をした。

「私、地下の入り口なんて知らないわ。」

ユーチャがマニョに視線を向ける。
このマニョも元はと言えば魔物側の者だったのである。
初めてユーチャ達に攻撃を仕掛けてきた魔物はマニョが率いていたのだから。
そのマニョが知らない入り口?

「そう、普通は知らない。」

カラシュがまるでユーチャの心の問いかけに答えるように話しはじめた。

「地下の入り口は隠し通路だ。ここを抜ければ一気に空の入り口の上、魔王の間の近くに行ける。」
「そんな場所なんてあったの?何であんたが知っているのよ!」

マニョの問いかけにカラシュは苦笑する。
ユーチャは首を捻った。

「まあ……カラシュは魔王の配下の中でも上位クラスだったのだから……。」

その言葉にカラシュは首を左右に振った。

「いや、魔王は基本的に何者も信用しない。例え腹心でも関係ない。」

そこまで言ってカラシュは遥か遠くを眺める様に、魔王の城を見つめた。

「…昔、ここには鴉の鳥人達が暮らしていた……馬鹿な幼い王子が魔王に城の隠し通路を教えてしまう前まではね…。」

苦笑して己の左胸を見た。
今、この身に走る痛みは…あの遠い日に消えていった仲間達の苦しみなのかもしれない。

「隠し通路は鴉の王族しか知らない緊急避難の為のものだ。今は、俺と魔王しか知らない。その通路の意味も分からず魔王に放り込まれている知能のない魔物はうろついているかもしれないがね。上級の知能ある魔物を相手にするよりは楽だろう?」

ユーチャがじっと見つめてきた。
暫くして短く答える。

「分かった、そこを通ろう。」
「入り口は城の西側。外堀の一角にある鴉のレリーフのうち、一つだけ翼に傷のある鴉がいる。そのレリーフを壊せば入り口が現れる。暗いから松明を用意しとけよ………すまない、ポッポちゃんを頼む。」

マニョが少し驚いた顔をする。

「ちょっと、あんたも一緒に来るんでしょ?何を言い出し……。」

ユーチャがマニョを自分の背に隠した。

「敵襲だ……!」

瞬間、カラシュが飛び立つ。
ユーチャが大剣を抜き、何か呟くと刃が煌めく。
そのまま振り抜くとカラシュを飛び越え、光の刃が空を走り抜けた。
けたたましい叫びと共に空から崩れ落ちる魔物達。
難を逃れ未だ空中にいた魔物達に、今度は黒い翼が迫り来る。
バサリと黒い翼が音を立てた瞬間、切り刻まれ落ちていく魔物。

「ユーチャ……コイツらは俺が引き受けてやる。さっき言った場所、分かったよな?入り口からは一本道だ。多少トラップがあるから気をつけて行けよ!」

暫く見上げていたユーチャがまた光の刃を放った。

「分かった…まかせる…。ポッポ、鳩になってペン・ギンに付いていろ。マニョ、サポート頼む。行くぞ!」

バタバタとその場から動き出した一行を視界の端に捕らえてカラシュはニヤリと笑った。

「最後だ……思いっきり暴れてやるさ……命尽きようともな……!!」

そう、最後だ。
そう思った瞬間、力強い声が背後から響いた。

「カラシュ!……耐えろよ!!…耐え抜け!私は必ず……魔王を倒す!!」

………。

「ああ、分かっている………!あんたを信じている!」

チラリと見たユーチャは珍しくニヤッと笑ってみせ、すぐに背を向け皆に追いついていった。
あんたなら出来るよ。必ず魔王を倒すさ………そう信じている。

「さてと、どいつもこいつも見た事ある醜い顔だな。俺の配下で蠢いていた下っ端ども……覚悟はいいな!?」

カラシュの黒い翼が猛々しく風を切った。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

第11弾っとね……。

珍しくクマが大人しいですね。

カラシュ、実は元王子様??
うわっ、似合わねぇ〜 ε=(>ε<)プ
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(C) 君が見ていた夢物語 / 総八
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