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心の赴くままに言葉を綴る、おかしな創作の空間
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微かに下方からの声が聞こえる。
ユーチャ達が何やら話をしているらしい。
加わるつもりもないカラシュは、大きな枝に腰を掛け、木の幹に背を任せながら目を閉じていた。
意識して静かな呼吸を繰り返す。

大丈夫だ。
まだ痛みは抑えられる。

念じる様に心の中で呟いていると、微かな風を頬に受けた。
木の枝に投げ出す様に伸ばしていた足に、僅かな重みが加わる。
まるで小鳥がとまったような……。
感じた香りはいつもの香り。
目を開けなくても分かる。
きっと赤い瞳がこちらの顔を覗き込んでいるだろう。
眠っているのかと確かめる様に。

このまま狸寝入りを続けるか。
それとも優しく微笑みながら目を開けてあげようか。

そんな一瞬の躊躇いの間に、それをフワリと唇の上に感じた。

目を見開いた。
思っていたよりも近くに、本当にすぐ近くに赤い瞳があった。
優しい光が見つめている。

「シルバ。」

そしてまたフワリと…唇が重なる。

咄嗟に押しのけた。
驚いた白い翼が揺れ、フッと空中に浮かぶ。

黒い翼は風を掴み損ね、重力に掴まれた。
バサバサという虚しい足掻きの音だけ残し、鈍い音で地面に衝突する。


「鳥も落ちるんだな。」
「やだ、寝ぼけたの?」

近くに落下してきたカラシュを眺め、ユーチャとマニョが珍しそうな表情をした。
が、すぐにギョッとして目を見開く。

カラシュの目から溢れ出る涙。
左胸を押さえ歯を食いしばった後、身を翻した。
今度は力強く風を掴み、黒い翼はあっという間に空を翔て行く。

「やだ…どうしたの?」

マニョが呟くが誰も答えなど出せない。
ユーチャが眉間に皺を寄せて考え込む。

「あいつ……また左胸を押さえていた……。」

時々カラシュがそんな行動をするのを、ユーチャは何度か目撃していた。
病気でもあるのだろうか?

「左胸には…もきゅもご……痣があるの……もご…クマ〜。」

のんきな声にユーチャが視線を送る。
ペン・ギンが何やらその辺の草花をもしゃもしゃと口にしながらモゴモゴ喋る。

「魔王の刻印……もぎゅ…クマ〜、契約の証クマよ〜…もぶ……痛いのクマ……ゴックン…この花は美味しくないクマね。」

………。
ユーチャは助けを求めるかの様にマニョに視線を送ったが、彼女は肩を竦めてみせた。
…………わからん………。

パタパタと上からポッポが降りて来た。
オロオロしながら頻りに「シルバ、シルバ」と口にする。
今にも泣きそうだ。
そんな彼女をマニョが慰めにかかるのを見てから、ユーチャは歩き出した。
それはカラシュが飛んで行った方角だ。

「……分からんが……貴重な戦力がやばいらしい……。」

ユーチャ的にはこのヘンテコパーティで、カラシュは確実に頼れる戦力No.1なのである。
戦えない白鳩鳥人。
あまり魔法成功率のよろしくない色ボケ魔女。
びっくりどっきり何が飛び出すか分からない道化師。
貴重だ。貴重なのである。
普通に戦える。まともに言葉が通じる。偵察も荷物運びも道案内も出来る。
多少の捻くれた性格など補って余りある貴重な人材だ。

失ってはマズい。
自分が少しでも楽をするには……!

ユーチャの足は自然と早足になった。


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きょうカミュさまが視界が伏せしたかも。
それできのうカミュさまが、生活したかったの♪
でも、総八はポッポに偵察しないです。

*このエントリは、ブログペットの「カミュさま」が書きました。
きょうカミュさまは総八で偽名も硬直したかったみたい。

*このエントリは、ブログペットの「カミュさま」が書きました。
「あんたって、本当はシルバって名前なの?」

少し離れた場所でペン・ギンと遊ぶポッポを眺めていたカラシュに、マニョが暇つぶしとでもいう様に問いかけた。
一緒に旅を続けるようになってから暫く経つが、今更ながらに聞いてみたといったところか。
カラシュはちょっと溜め息を吐いてからボソリと答える。

「正真正銘、カラシュって名前ですがね。」
「でも、ポッポちゃんはシルバって呼ぶじゃない。」

あまり突っ込んで聞いて欲しくないという思いが沈黙を作る。
ユーチャがポンッと手を打ち、落ち着いた声で言った。

「偽名を使って騙そうと思ったら、懐かれ、情がわいたに1票。」
「なるほど!流石ユーチャ様〜んv それでそのまま訂正出来ずにいるヘタレということで、もう1票追加!」

バサッとマニョの頭を翼が叩いた。

「んなわけあるか!」

翼でツッコミを入れるところを見ると、一応「それなりに優しく」という配慮はしてくれているらしい。
さして痛くもない頭をマニョがわざとらしく手で触れる。
ちょっぴり無言で睨み合ってみた。

「…呪をかけられた。」

根負けしてカラシュがポツリと呟くと、マニョはちょっと驚いた表情を見せた。

「え、やだ〜。エンガチョ〜。」
「マニョ、残念。エンガチョでは呪は防げない。」
「ユーチャ様鋭ーいv いや〜ん、マニョ困っちゃ〜う!」

どうやら真剣に聞く気はないらしい。
ポッポと自分の関係など特に気にしないということなのだろう。
それはそれでありがたいとカラシュは安堵する。
あまり触れて欲しくないことの様に思うから。

「ところでカラシュ。」

相も変わらず落ち着いた声でユーチャが呼ぶ。
カラシュが顔を向けると、片手でグイッと胸ぐらが掴まれ引き寄せられた。

「顔色が悪い。」

ドキリとカラシュの心臓が跳ねる。
真剣な目がピタリと合わされていた。

「………ちょっと、疲れてるかも…心配ない……。」

そう伝えたが暫く返答がこなかった。
ようやく手が離されると言葉がかけられた。

「道案内だけでなく、偵察もしてもらったりしているから………少しゆっくり進もうか。」

ユーチャの言葉を聞きながらカラシュは無意識に左胸を押さえる。

「いや……そう悠長にしていい旅でもないだろう?大丈夫だ……急ごう。」

時間が惜しい。
死の契約は確実に力を増している。
この契約の証の下、心臓はいつまで耐え抜くのか……カラシュには見当もつかない。


「エンガチョで防げればいいのに………。」


呟きの声は自分以外には届かなかったらしい。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ウサ耳の間に白鳩がちょこんと座る。
それを皆が注目しながら話し込む。

「つまり、ペン・ギンは負の力から守る結界みたいなものか。」

ユーチャが腕組みをしながら結論を出すと、ペン・ギンは不思議そうに首を傾げた。
頭の上でポッポがずり落ちそうになってバタバタと羽を動かす。

「本人に自覚がないのはまあ…あれだが…ペン・ギンの傍に居れば、この子は大丈夫なんだろう?」

落ちそうになるポッポに手を差し伸べながら、ユーチャはカラシュに目を向けた。
頷いてカラシュが肯定の言葉を発する。

「魔王は…意外とこういう嘘はつかない…多分そうなのだろうと思う…。」

「ふむ」とユーチャは納得の意を示し、今度はペン・ギンに目を向けた。
頭の上のポッポは相変わらず不思議そうな顔で状況が読めていないようだった。

「とりあえず、ペン・ギン。お前にその子を任せるからな。」
「ハイ!なのクマ。」

カラシュがジトッと道化師を見遣る。
信用ならないとでも言いたげだったが、どうしようもない。

「さて、あまりゆっくりしていると日が暮れてしまう。行こうか。」
「私、もう今日は野宿いや〜!」
「だったら早いところこの森を抜けてしまおう。次の町まではどれほどかは分からないが…。」
「クマがこの前、地図燃やしちゃったからいけないのよ!」
「え〜、クマ悪くないクマ〜。遊んでたら燃えたクマよ〜。」
「遊びで賢者級の火炎魔法を出さんでくれ……。」

勇者一行は旅の先を見据えて歩きはじめた。
カラシュは足が地面に貼り付いた様に動けない。
早く自分も魔王の元へ戻らなくてはいけない。
心無しか左胸にある死の契約の証が疼いた気がした。

「クルッポ〜」

鳴き声に俯いていた顔を上げた。
白鳩がこちらを見ていた。

「クルッポ〜」

もう一鳴きすると白鳩は可愛らしく羽ばたく。
トンッと地に足をつけた時には、色白の可愛らしい娘の姿に変わっていた。

「シルバ。」

………。
別れるのにはいい機会なのかもしれない。
そんな思いが頭を過った。
ただじっと可愛い赤い瞳を見返す事しか出来ないでいた。

「何をしている?」

気がつけば彼女の傍に勇者が佇む。
こちらを見ながらいつもと変わらない調子でその人は言った。

「早く来ないと置いて行くぞ、カラシュ。」

思わず目を見開いた。
カラシュは暫し言われた言葉を頭の中で反芻していた。
無意識に左胸を押さえた。

「♪早くしないと皆で楽しい野宿仲間〜♪クマ!」
「ちょっと縁起でもない歌やめてよね!」
「野宿楽しいクマよね〜♪カラシュも今日から野宿仲間クマよ〜♪」
「うるさいわよ馬鹿クマ!カラシュ!あんたこの辺詳しくないの?野宿じゃない手段教えなさいよ!」

いいのかな………。
いいのかな………俺、あんた達と一緒に行っても……
ポッポと一緒に行っても……

離れたくないんだ。
あの白い羽と共にありたい。

「カラシュ、早く!」

迷いも何もかも吹き飛ばす様なユーチャの声に、やっと足を動かした。

カラシュは数歩だけ歩くと、バサリと力強く羽ばたく。
低空で軽やかに進むと、パタパタと白い翼が横に並んだ。
横目で見遣ると、微笑む笑顔が見えた。

胸は少し痛いけれど、心は軽い。

「この森を北西に抜けると町がある!あんたらの足で…頑張って2時間!日の入りと競争だ!急げよ!」

マニョの「え〜〜〜!」と言う声と共に勇者一行は足早に旅路をまた進みはじめた。


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(C) 君が見ていた夢物語 / 総八
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