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心の赴くままに言葉を綴る、おかしな創作の空間
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報告もそこそこに自室を目指し足早に駆ける。
ついには駆けることすら面倒臭くなり、広い廊下であるのをいいことに翼をはためかせ軽く飛ぶ。
目指す部屋の前で降り立ち、懐から鍵を取り出した。
ガチャリと鍵を回し、戸を開けると同時に声を出す。

「ポッポ、ただいま。」

その声に愛らしい顔が振り向いてくれるはずだった。
しかしそれは見られず、部屋を眺めればベッドに期待していた彼女の姿を見つける。
ついうっかり眠り込んでいるのだろうか?
そう思い、そーっと覗き込んで息を飲んだ。

「ポッポ!?苦しいのか?ポッポ!?」

ぐったりとした様子に驚き、声をかけるが返事はない。
ほんの少しだけ薄く目を開き、赤い瞳がこちらを見た……が、またすぐに目蓋は閉じられた。
顔色が悪い……。
弱っている、それだけは嫌なくらいに理解出来た。
どうすれば治るんだろう?
俺は何をしてあげればいい?
そんな混乱する頭に声が響いた。

「もう限界が来たか?」

目を見開き振り返れば、戸口に佇む黒髪の男。
その圧倒的な存在感を負の気と共に纏い、ニヤリと笑ってみせた。

「魔王……あんた、何故ここに……。」

こんな部屋に用はないだろう?
今更ながらポッポを己の背と翼で隠す。

「チリチリと小さな正の気が目障りだ。俺もそろそろ我慢の限界だったが、それより先にそちらの方がくたばりそうだな。」

くたばる、その言葉を聞き、背筋に冷たいものが走る。
恐る恐る後ろに視線をやり、悲鳴をあげそうになった。
視界に小さな白い鳩が映る。
小さな小さな、ただの鳥……。

「体のコントロールも出来ないらしい。本当に限界だな。」

魔王が意地悪くクククと笑う。
鳥人は普段は人の形を為すが、鳥の姿にも変化することが出来る。
大抵は己の気をコントロールして姿を変える。
しかし弱り切ったりと気を乱した状態の場合は、意図しないところで変化を繰り返すことがある。
意識のない今、ポッポが変化したのはそれ以外の何ものでもない。

「ポッポ……。」

小さなその白い体を手で包み、引き寄せる。
どうすればいい?そうすれば助かる?

「なあ、魔王。あんた強大な力を持っているんだろう!?頼む、ポッポを助けてくれ!!」

殆ど鳴き声に近かった。

「頼む、なんでもするから!!なんでもするからー!」

縋る様に見つめた相手は、暫くじっと見下げてきたが、不意にその顔に呆れた様な表情を作り、不敵に笑った。

「なんでもするのは元からだろう?取引にならんな。」

魔王が自身の左胸をトントンと指で叩いてみせた。
カラシュの顔が歪む。
そうだ、自分はもとより死の契約に縛られた下僕なのだ。

「だいたい、賢い鴉が随分と取り乱しているようだが…その女を苦しめる負を生み出す源は俺だ。どうにかしろなど無理な話だな。」

不敵な笑顔はじっとカラシュを見つめる。
カラシュが若干魔王側によろめいた。
魔王が半歩ほどさがる。

「おっと、それを近づけるなよ。どうにも胸くそ悪い。まあ、俺に触れれば一気に消滅だがな。」

ビクリとしてカラシュが小さなポッポを腕で包み込み抱き寄せた。

「……親鳥か、お前は。」

フンと鼻で笑ってみせた魔王は腕を組み、やはり見下げてくる。

「…面白い情報をやろう。この世界で一番正の気が満ちている場所だ。負の気もすぐに浄化される、私の影響を撥ね除け続ける場所。いや、場所ではないな……人物……とも言いたくないが……」

カラシュの表情が変化する。
その言動の真意を見極めようと、カラシュは魔王の言動に集中した。
これだからコイツは面白い……魔王は内心でそう思いながら、次の言葉を発した。

「私の邪魔をする、あの勇者一行にあるもの。」

カラシュの目が細められた。
魔王の表情は実に面白そうだ。


「道化師ペン・ギン。」


カラシュの目が見開かれた。
バサリと翼が鳴る。
大きめな窓の戸が派手な音を立て開かれる。

淀んだ空に舞う漆黒の翼を、魔王は見送る様に眺めた。


「死の契約に逆らってみせるか?カラシュ。………何にしても楽しませて欲しいものだな。」

魔王はひどく退屈なのだ。





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第5弾……っす!

ちょっとカラシュ視点からずれてしまったりと……反省点もありつつ。

このまま突き進む。おぅ!
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(C) 君が見ていた夢物語 / 総八
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